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第4章 初日
波風は、白い部屋が消えていったとき、暗い海にでも放り出された様な心許なさを覚えた。周囲の人や物が全て深く沈んでいく、そんな感覚を数分感じていた。
「司、司!もうちょっと速く走って!」
十坂が波風の手を引きながら、焦りと恐怖の入り混じった声で、波風は深い海から引き上げられた。
“そうだ、数分前、俺たちはスクランブル交差点のど真ん中にいた。それを、囲むようにゾンビがいた。三年二組の委員長の大山直人が、ゾンビを普通の人間と思い殺されたんだ。その血の匂いに他のゾンビが群がってきて、沢山の人が殺されたんだった”
「ああ、大丈夫。ごめん」
そう言いながら周りを、見渡すといつもの仲間がいた。だが、市川の姿は無かった。本当に死んだのか?波風達は、どこかの路地裏に逃げ込んでいた。
「ここを、抜けたらあの小さなビルに入ろう」
三階建ての古い小さなビルを、里山が指差しながら言う。ビルの中は、外見通り古くヒビ割れしたタイルがいくつかある。ゾンビが、いないのを確認すると逃げやすいよう奥の一室に身を隠した。
「はぁはぁ。何なんだよこれ!天野がやってんのかこれ。人が本当に死んだよ。光一は本当に死んだのかよ!どうなってるんだ」
南が大声で言うのを、里山が手で南の口を抑えながら言う。
「光一のことは分からない。けど、この状況に俺たちは置かれていることは、事実だし現実だ。まずは、このゲームを生き残ることが何より重要だ」
「まずは、この緑色のバックの中身を、確認しようよ」
十坂が、みんなに問い掛けた。これのバックは、ルール説明の後に支給された物だ。中には、武器、飲食類、コンパスなど必要最低限の物が入っている。武器はランダムのようだ。
「うんうん。そうしよう」
佐藤栞が同意する。
武器は、波風→鍋の蓋、十坂→双眼鏡、里山→カマ
佐藤→ナイフ、南→救急箱、野上→スタンガン
「くそ!こんなんで、どうやって戦うんだよ」
波風は、鍋の蓋だったことに腹が立っていた。
「でも、僕のは絶対役に立つよ」
救急箱だったことに少し安堵したように南が言う。
「あのさ、天野は現実にある物は、この世界にも実在するって言ってたから出来る事なら必要な物は、今から集めてた方が良いんじゃないか?」
先程から何か考え込んでいた野上修が口を開いた。
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