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「伝言。なんだって?」
訊いた俺に、「あ、やっぱ気になる?」とシンジが笑う。
「なんだよ」
「これは、まだ可能性アリかなぁ?」
意味ありげに笑うシンジに「早く言え」と急かす。
すると掌から頬を剥がし、真ん前から俺を見据えた。
「『俺は、真治を諦めるつもりはない』って。『奪い取りたいなら、全力で来い』ってさ」
どうする? と問いかけてきたシンジに、少しの間を置いてニヤリと笑み返す。
「じゃ、俺からも伝言頼むわ。『望むところ』ってな」
俺の言葉に、プッとシンジが吹き出した。
「俺ってモテモテェ~」
カラカラと笑ったシンジに、唇を寄せる。
頬にキスすると、キョトンと目を丸くした。
「……アユムとは、もっと先までしてるぜ?」
頬に指先をあてながらの挑発的な言葉に、「あんま煽んなよ」と溜め息を吐く。
するとシンジは、「お前もだろ」と返してきた。
「お前が居ないだけで、一晩中泣くカノジョがいんだろ。俺かカノジョか、どっちかしっかり選べよ」
僅かに嫉妬の滲む視線が、なんだか心地よい。「彼女は捨てれないなぁ」と呟いた俺に、目を剥いた。
「お前にも、今度会わせてやるよ」
「いらねぇよ」
「めっちゃ美人な――…」
「あーあーあぁー」
聞きたくないと耳を塞ぎ声を出すシンジの耳元に、口を寄せる。
「黒猫」
途端。
ボッコ! と頬を殴ってきた。
「ってぇな!」
何すんだ、と目を剥けば、殴ったばかりの俺の頬にキスしてくる。
コイツは……と、睨むことしかできなくなった。
「もう俺を、ほったらかすな。後、ジョンも」
判ってるよ、と今度こそシンジに背を向ける。
「電話、いつでも出れるようにしとけ」
「おぅよ!」
笑うシンジに見送られながら、俺はバッグを持ち直し、肩越しにフリフリと手を振った。
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