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廊下の端、暗闇を背に何かが立っている。
白い死装束のような着物をだらりと着て、細長い面を付けた人型の何か。何かを探すようにフラフラと顔を動かし、滑るように歩いている。
その手には長い刀を持っている。
ソレをみた瞬間、強烈な嫌悪感に包まれた。
気持ちが悪い、凄まじい異物感。
なんと表現すればいいのか分からない程の
「嫌な感じ」
「………………。」
よろよろ後ろへ下がり、情けなくその場にへたり込む。
「…あれ、何?すごく気持ち悪い…。君は知ってるの?君は誰?」
少女は僕のそばにしゃがみこみ、口を開いた。
「…………。」
「………え?」
僕の目の前で、少女はパクパクと口を動かす。
しかし、彼女の口から言葉は出ていない。
「もしかして………喋れない?」
少女はこくん、と頷いた。
「………そ、そっか。そうだったんだ…。ええっと、なにか書くもの…」
あたふたと辺りを見回すが、残念ながら書けそうなものは辺りに見当たらない。
諦めて、少女に向かう。彼女は相変わらず感情の読めない目をして僕を見ている。
「…えっと、言葉は分かるよね?」
「………」
「良かった…じゃあ、その…、君は誰…じゃだめか、えと、あ、名前!名前は?」
少女は、パクパクと2度口を動かした。
「 、 」
「…い、お?」
少女は不愉快そうに顔をしかめる。
「あっ、違うんだね。えっと…」
「 」
「い…」
少女は心底呆れた様な表情をして、深くため息をつく。
そして、
「…み、お…?」
僕の手を取り、ゆっくり字を書いた。
書かれた文字を口に出すと、少女は満足げに頷いた。
「みお、か。…いい名前だね。」
安堵に息を着いて、みおに向き直ると、みおは照れたようにふいっと視線を逸らし手を離した。
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