オープニング

4/6
前へ
/6ページ
次へ
廊下の端、暗闇を背に何かが立っている。 白い死装束のような着物をだらりと着て、細長い面を付けた人型の何か。何かを探すようにフラフラと顔を動かし、滑るように歩いている。 その手には長い刀を持っている。 ソレをみた瞬間、強烈な嫌悪感に包まれた。 気持ちが悪い、凄まじい異物感。 なんと表現すればいいのか分からない程の 「嫌な感じ」 「………………。」 よろよろ後ろへ下がり、情けなくその場にへたり込む。 「…あれ、何?すごく気持ち悪い…。君は知ってるの?君は誰?」 少女は僕のそばにしゃがみこみ、口を開いた。 「…………。」 「………え?」 僕の目の前で、少女はパクパクと口を動かす。 しかし、彼女の口から言葉は出ていない。 「もしかして………喋れない?」 少女はこくん、と頷いた。 「………そ、そっか。そうだったんだ…。ええっと、なにか書くもの…」 あたふたと辺りを見回すが、残念ながら書けそうなものは辺りに見当たらない。 諦めて、少女に向かう。彼女は相変わらず感情の読めない目をして僕を見ている。 「…えっと、言葉は分かるよね?」 「………」 「良かった…じゃあ、その…、君は誰…じゃだめか、えと、あ、名前!名前は?」 少女は、パクパクと2度口を動かした。 「  、 」 「…い、お?」 少女は不愉快そうに顔をしかめる。 「あっ、違うんだね。えっと…」 「 」 「い…」 少女は心底呆れた様な表情をして、深くため息をつく。 そして、 「…み、お…?」 僕の手を取り、ゆっくり字を書いた。 書かれた文字を口に出すと、少女は満足げに頷いた。 「みお、か。…いい名前だね。」 安堵に息を着いて、みおに向き直ると、みおは照れたようにふいっと視線を逸らし手を離した。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加