井上勇樹の想像記 番外編~勇樹目線~

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井上勇樹の想像記 番外編~勇樹目線~

ぼくの名前は井上勇樹。 今日からは、楽しい楽しい夏休みが始まる。 しかし全然楽しくないのが、「通」で始まって「表」で終わる、あれ……。 ぼくの学校は五段階の数字で評価する仕組みで一番いいのは5なんだけど、開いてみると本来ないはずの0の文字……。 1以上の数字は、ない。 動きが完全停止した体の中、頭だけを必死に動かす。 どうやってごまかそうか? ぼくは先生に包み紙をもらい、それで通知表を包んだ。 これをお母さんに「チョコだ」と言い張って渡すことでごまかすんだ! 昼食をつくっている時間帯なら、お母さんは忙しくてそんなにぼくの話を気にしないだろう。 そう考えたぼくは昼食をつくっている時間にまにあうよう全力疾走で家に帰り、すきをついて通知表入りの包みをわたした。 よし、成功! これでお母さんに「通知表は?」と聞かれても「もう渡したよ」ということができる。 怪しまれてランドセルをさがすかもしれないが、実際わたしているんだから見つかるわけはない。 その他の荷物も、お母さんが電話している間にわたすことができた。 完璧な計画だ! ……それなのに。 夕食の時間、帰ってきたお父さんは通知表のことをきいた。 なんとかごまかせたが、声がつい甲高くなってしまった。 いや、イカンイカン! 普段のぼくを保つんだ! ますます怪しまれるぞ! いつものぼく、いつものぼく……こんなとき何をする? そうだ、デザート! デザートを要求するんだ! お母さんにデザートを催促。 しばらくして台所から、 「勇樹~~~っっ!!!!!」 という、お母さんの大声が聞こえてきた。 楽しい楽しい夏休み? そんなこと誰が言ったんだろう……。 この地獄の夏休みが、楽しいわけないじゃないか……。           <fin>
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