狗は蜜色

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狗は蜜色

 太陽が、焼け爛れて沈んでいく。赤色は景色を蹂躙し、容赦なく血塗れにした。  くすんだ硝子壜の反射光は僕の目を切り裂く。胸のじわじわ来る苦しみとはちがう、沁みるような鮮烈な痛みがする。  壜の中の丸めた白い手紙が、窮屈そうにしている。これはたわむれだ。僕は密閉を確かめ壜を窓から精一杯投げた。家の脇を流れる川へ落ちるのを見届ける。  ひと息ついて窓の景色を見遣る。遠くにあるのは林立するビル。それより手前のあちこちに積もるのはゴミの山。  煉瓦塀と蔦で囲まれた我が家の周辺の環境との落差よ。ここは神経質なまでに清潔だ。  窓際からベッドに戻る。  二つ目の壜は今のところ用意していない。先程の壜の行く末に思いを馳せてみた。  川下の方には“狗”がいる。  ◆
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