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「父さん!あの化け物倒し・・・た・・・」
良い報告ができることが楽しみで、軽い足取りで父の方へ向かった。
しかしそこには、冷たくなった父の姿があった。青白くなった顔の表情は、さっきまでの仏頂面からは想像できないほど優しく、柔らかく微笑んでいた。
嘘だろ?父さんは大丈夫だったんじゃないのかよ?
何だよ、使命を果たしたみたいな顔して。
果たしてねえよ、もっと俺に剣の扱い教えてくれよ。
帝国騎士団の人たちも心配するだろうが。
なあ、目を覚ませよ・・・!
俺は父の身体を何度も揺さぶった。でも、父が目を開けることはなかった。
どうして?俺は今までずっと辛いことに耐えてきたのに、なぜ唯一の幸せを奪う?
なぜ?どうして?
嫌だ嫌だ嫌だ、もうやめてくれ、俺にはもう何にもない。これ以上は、もう・・・
「もう・・・やめろ・・・」
その時、俺の左手・・・正確には左手の奇妙な証が光を放ち、体の奥底から何かが溢れ出るような感じがした。
炎のように熱かった・・・いや、あれは炎だったのかもしれない。
そしてその真っ赤な炎は形となって、俺の前に現れた。
そして俺を、俺の気持ちに同情するように、静かに見つめていた。
ーお前は、誰だ?
問いかけるとそれは、
『あなた』
と答えた。言葉は足りていないような気がするが、一応理解はできた。
ーお前が俺?よくわからない。
『あなたが壊れてしまわないよう、私がいる』
訊けば訊くほどわからなかったので、質問を変えた。
ーお前は、何者だ?
するとそれは、
『いつかわかる時が来る』
とだけ答え、青い炎の中へ消えていった。そして、俺もそれに飲み込まれた。
あれ?俺は・・・
いつの間にか、意識を失っていたらしい。いきなり両親を失くしたショックだろうか・・・
辺りを見回して、両親を捜した。でも、どこにも見当たらない。
不審に思ったので歩いて捜してもみたが、結局両親の肉体を見つけることはできなかった。
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