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アリシアは光を纏った剣をこちらに向けながら、
「ミラーク、できるだけ片手を挙げて。」
と、冷静な口調で言った。俺は言われた通り右手を上げ、左手はせめてもの抵抗として地面を掴んだ。
とにかく、今はこいつに従わないと、死ぬかもしれない。死ぬのは、怖い。そう思ってしまった。
・・・ほら。俺はやっぱり、死ぬことすらできない勇気のないやつだ。どんなことでも勇気を出して一歩踏み出すことができれば、この18年間も少しは楽に過ごせたかもしれない。周りの人だって、俺に差し支えなく接してくれたかもしれないし、両親だって、俺のせいでとやかく言われなくなったかもしれない。
「・・・ちょっと、そんなこの世の終わりみたいな顔しないでよー。だーいじょーぶだって!私に任せろ!」
気がつけばアリシアは笑顔でそう言っていた。
ああ、俺そんな顔してたのか。無意識って怖いな。
そんな風にぼーっとしていた俺を差し置いて、アリシアはさっきから深呼吸ばかりしている。この場の酸素が足りなくなりそうなくらい吸って、二酸化炭素がこの場を埋め尽くしそうな勢いで吐いている。
肺の中の空気を全部出し終えたらしいそいつは、真剣な面持ちでこちらに剣を向けた。
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