出会い

1/9
12人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ

出会い

 長くなってしまったが、これが、たった数ヶ月前の奇妙な出来事だ。  でも、俺にはずっと前のことのように感じる。両親がいなくなってから、一日がとてつもなく長く感じるようになったし、かろうじて鮮やかに色づいていた日常も、今じゃ真っ白のままだ。  相変わらず俺に対する周りからの差別は変わらないし、むしろ酷くなった気がする。  俺が両親を殺しただとか、あいつは世界を破滅へ導く悪魔だとか、変な噂も流れている。誰が始まりかは知らないが、とりあえず最初に流したやつを一生恨むつもりだ。  やることがないので、最近の日課は散歩だ。仕事はどうしたと言われるかもしれないが、この国では二十歳にならないと金銭を稼ぐ行動ができない決まりになっている。ちなみに、俺は十八歳だ。なので、それまでは国から補助金が出るし、父の騎士団での活躍が認められて、退職金としてお金を貰ったし、母が仕立て屋として働いて稼いだものも残っているので、一応不自由なく生活はできている。  今日も歩きに歩いて、海辺まで来た。  この海はどこかの国の言葉で『the Glutonny Sea(ザ グラトニー シー)』という名で、訳すと『大食の海』。昔からこの海は荒れていて、数多の人々が波に呑み込まれたことから名付けられたのだと、歴史の本で見たことがある。  こんな話があるせいか、この海に来る人はほとんどいない。最近は毎日この海に来ては、ただ波の満ち引きを眺めている。  ・・・そして、考えてしまう。  今の俺は生きているといえるのだろうか。もしかしたら雄大で力強いこの海の餌となって、どこか遠いところへいった方が幸せなんじゃないだろうか・・・  今日こそは、と覚悟を決めたつもりでこの海に来るが、恐怖心が邪魔をして、ただ眺めてそう考えるだけになってしまう。  ・・・でも、今日は違った。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!