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あくる日、しょんぼりとしてクラスの友達に言った。それから一週間、僕に一つの渾名がつけられた。「十娘妹殺人鬼」僕の後悔はどんどんふかくなっていった。
それ以後動物は飼っていない。
カイコの交尾を見たことがある。それは一人の勉強のできる少女がマユの研究を夏休みの自由研究でやったのをもってきたのだ。マユから出てきた。蚕であった。性(セックス)という言葉は知らなかった、ただその行為は卵を産む、二匹の蚕は互いに逆向きに尾をはりあわせていて互いに羽をバタバタとやっている。
あたかもそれでもともとが一つの生物のようで、別々のものであるとは思えない。卵を産むものであるということが不思議でたまらなかったのだ。
いつのまにか僕は死というものを思うようになってきた。
死んだらどうなるのだろう、何もかもなくなってしまうのか、自分は幽霊になって暗い所にいなければならなくなるのか、そう思うとたまらなく淋しく、たまらなく悲しくなってきた。そして涙が流れた。
「どうしたんだ」と父が聞いた。
「死ぬのはいやだ」と僕はいうと
「あと七十年も先の話だ」と父は笑った。
しかし七十年後には死ななければならないのだ。
その後、一時期歩いている蟻を踏まないように注意して歩いたりたり、又ジェット機や、プラモデルに入っているミサイルをわざとつけないようにしたことがある。
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