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【第1章:良いニュースと悪いニュース】
1-1:地味少女、岸小路 愛
よくアメリカ映画なんかで
「良いニュースと悪いニュースがあるんだが、どちらから聞きたい?」
なんて台詞がある。
この片田舎の町で、まさにその台詞のように、『良いニュース』と『悪いニュース』両方がたった一日で起きてしまった。
いつもは変わったことなど、なんら起こらない、この田舎町で。
◆◇◆
それはまだギラギラとした日差しが鬱陶しい、夏休み明け初日のことだった。
夏休みにどこに行った、あそこに行ったなどという、もう何十年も以前から繰り返されているであろう会話で騒がしい朝の教室。
奈良県の吉野町にある県立吉野高校二年二組。山に囲まれた片田舎の高校で、今日からまた何の変哲もない退屈な日々が始まるのかと、欽田一タケルは席でため息をついた。
「おいタケル! 聞いたかぁ?」
突然かけられた、あまりに能天気な声。タケルが顔を上げて声の主に視線を向けると、幼なじみの親友である渡 哲夫が、顔中をにやにやさせている。朝っぱらから、元気なやつだ。
哲夫は実は刑事の息子なのだが、真面目というよりおちゃらけな性格をしている。
「何を?」
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