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ぶっきらぼうに返したが、哲夫は気にすることもなく、相変わらずのハイテンションで興奮気味に答えた。
「超絶美人の転校生が来るらしいんだよぉ!」
これが、何ら珍しいことなど起きようのない我が町に起こった良い方のニュース。
「超絶美人? おまえの目は、あてにならないからな」
「いや、僕が直接転校生を見たわけじゃないけど」
「なんだ、そりゃ」
タケルは無表情で答える。
「情報によるとさ、職員室に見たことがない女子生徒が、二人入っていったんだって。それがもう、身の毛もよだつくらいの美女だったって!」
「身の毛もよだつって、美人に使う言葉じゃないぞ。まあ、どうせ嘘っぽいけど」
「タケルぅ、おまえ信じてないだろ!」
「ああ、哲夫の言うことは、だいたい信じられない」
「酷いこと言わないでくれよぉ!僕はタケルの一番の親友じゃないか?」
哲夫は拗ねたように口を尖らせるけれど、男のそんな顔を見ても嬉しくもなんともない。こんな時の哲夫は、無視するに限る。
それに美人がどうのとか、タケルにはあまり興味がない。
中身のない会話をしているうちに、始業のチャイムが鳴った。
「早よ、座れよ」
タケルは哲夫に向かって、自分の一つ前の席を指差した。
窓際の一番後ろがタケルの席で、その前が哲夫の席。
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