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中学生の僕、理科の時間にガスバーナーを覗き込んで前髪を焦がした 僕の前髪は、アシンメトリー 理科室中に充満するタンパク質が燃えた臭い、冷めた目線、先生の怒号、情けなさ その時から僕は妄想の世界に住むようになった。 ───── 夕焼けがみんなを呼んでいた 僕は何も聞こえない あの赤色は、人が見ていい光じゃない あの赤はぼk ───── 僕と藤原はいつも通り公園に向かった。 そう、さびた蛇口とベンチしかない通称〝地獄〟だ。 地獄には、人が少ないせいか、活きのいいセミが多い。 僕らは、活きのいいセミを捕まえ、投げ合い、愛を確かめていた。 地獄には、地獄なりの楽しみ方がある。 僕らはそれを知っていた。 抜け出せない闇に落ちて、全部投げ捨てて、 ───── あの赤は僕があげた色、僕の全てをあそこに投げつけてやった。 輝く色は少年の目か。 僕には、赤黒い モノに見える。 みんな、騙されているんだ。 僕は何も言わない。 心の焦げ目隠して、海岸線を歩いてた。 ───── 観光客も少ない平日の朝、海岸線を走る電車、いつもの車両と人。 僕はいつも通り君の隣に座っていた。 イヤホンと前髪で世界を遮っていた。 ふと髪のあいだから見えた車窓に映る、君の顔 気持ち悪い音楽と気持ち悪い僕の顔 ずっと見ていたかったけど、気づいたらまた世界を遮っていた 今日は、学校を休もう。 ───── おかしいなぁ… 2時に地獄待ち合わせしたのに いつも5分前に来るのに 来る気配がない セミはいつも通りうるさいのに 錆びた蛇口もベンチもいつも通りなのに どうしt ───── あの日から僕は、学校に行かなくなった。 『夢は壊れやすいけど人は思い出から強くなる』 そんな歌詞、思い出のない僕は強くなれないのかな。 夢の中でしか生きていけない。夢は壊れやすい。 思い出は人を強くする。思い出はない。 素晴らしい日々、僕は独り ベッドの中で半分死んでいる 僕には、最初っから何も無かったんだ。 i've nothing to say i've not
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