0限目『 憧れ先輩 』

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0限目『 憧れ先輩 』

俺は、 内藤 零央 (ないとう れお) 17歳。 某県立高校3年、 剣道部副主将(副部長)。 梅雨に入り間もなく、 高校生活最後の『高体連』 が始まる。 高体連まで、あと1週間…。 高校の体育館に併設された、柔剣道場の雰囲気は『ピリッ』と張り詰めていた。 稽古や練習試合も『熱』を 帯びていた…。  俺の腕前は大したこともなく、後輩に団体戦の出場枠 を掠め盗られる程度の実力。 しかし、そんな俺に、 まとわりついてくる 女子が約1名いた…。 剣道部1年マネージャー の黒崎 早妃だった。 スラッとしたスレンダーな 容姿に長い黒髪が似合う、 若手女優の、新川 優愛 (しんかわ ゆうあ)似の 大人びた雰囲気の後輩 マネージャーだ。 我が剣道部には3人の女子マネージャーがいる、 その3人とも、俺は普通に接していたが、黒崎 早妃だけは今年のバレンタインデーでも他の3年、2年の女子マネージャーからは『義理チョコ』と言われ事務的に部活前に 渡された。 しかし、黒崎 早妃だけは、 部活後に校門で待っていて 「内藤先輩…、はい!これ、早妃の限定1個のスペシャル手作りチョコであります! へヘっ!」 ブルーのリボンのかかった 薄茶色の小箱を渡された。 「黒崎…。限定1個?」 俺は耳を疑った。 しかし、早妃は笑顔で一言。 「はい。内藤先輩専用のスペシャル手作りチョコであります!」 早妃なりのお茶目な『敬礼』のポーズをした。 早妃の手作りチョコはハート型で歪さも皆無の綺麗な手作りチョコだった。 俺は、早妃のチョコ作りに、センスがあると感じた。 「黒崎…、これ、お前の手作りだけど『義理チョコ』だよな?」 俺は早妃に聞いてみた。 早妃は小悪魔のように。 「アハハ…、それは内藤先輩のご想像にお任せします!笑よろしければではありますが、ホワイトデーのお返しは『内藤先輩と1日デートする権利』をお願いするであります!へへ!」 早妃はハニカミながら、 そう懇願してきた。 「うーん。黒崎…。 デートか…。俺、後輩女子 とデートしたことないしな…。こんな俺でいいのか?」 早妃は…。 「はい。もちろんであります!そんな内藤先輩がいい んであります!デート駄目 ですありますか…?」 早妃は笑顔から不安そうな 表情に変わった…。 「いいけど…。黒崎は一体、俺と、どんなデートがしたいんだ?」 俺は率直に早妃に聞いてみた。 早妃は再び、笑顔になり 「はい。公園デートがしたいであります。あたしが、スペシャルの手作りお弁当を作りであります! 内藤先輩…、こんなデートは、駄目ですありますか?」 再び、早妃は不安そうな表情に変わる。 「公園デートか…。初デートにはいいかもな!手作り弁当か…。黒崎…、お前、意外と家庭的なんだな!」 俺は感心した。 「はい。あたしの夢は『良妻賢母なお嫁さん』でありますから!てへ…笑」 早妃は、舌を出して軽く笑った。 俺は、その日から2つ下の、後輩マネージャー『黒崎 早妃』が気になり始めた…。 ある週末の他高校への練習 試合の合間の休憩中に、早妃は、いの一番に『レモンの砂糖漬け』を俺に持参したり、スポーツドリンクを他の剣道部員より、先にコップに注いでくれたりした…。 よく話すと早妃の自宅は、 俺の自宅に意外と近く、 いつしか、部活後一緒に下校する様になった。 ラインもするようになり、 ある日のラインで早妃に こんなお願いをされた。              早妃:内藤先輩…。よければ ですが、明日から『零 央(レオ)先輩』って 呼んでいいですか? あと、この呼び方は、 早妃だけの限定で! 駄目ですか?                俺 :あぁ、わかったい! 黒崎。 黒崎にはよくして貰っ てるしな。                早妃:ありがとうございま す。零央先輩…。あ、 もう使っちゃいまし た…笑  あ、もう黒崎はライン 中は止めて下の名 『早妃』って呼んでくだ さい。 駄目ですか?                俺 :わ、わかったよ。さ、 早妃…な。              早妃:はい。よく出来 ました。笑笑 あ、明日は、いよいよ 初デートの日ですね! さっき、零央先輩か ら、ライン来る前に、 ちょこちょこ仕込みを しちゃいました。 明日の手作りお弁当、 期待してくださいね!  俺 :あぁ、わかったよ。 俺も楽しみと言うか、 今から緊張しまくり だよ…。 手汗かいてるし            早妃:アハハ…。零央先輩 は意外に『小心者』? アハハ…。じ、実は、 あたしも、こんなんで すが、かなり緊張して いるであります…。 俺 :黒崎…いや、早妃。お前 はいつも『でありま す』口調だな。 アハハ…笑える。      早妃:え?そうであります か?なんか緊張する と、そうなるであり ます…汗       俺 :アハハ…早妃も可愛い とこあるな!     早妃:先輩、笑い事では ないでありますよ! …汗  俺 :ゴメン、ゴメン…。 なら明日、◯府公園 東出入口の前に、 午前10時、待ち合わ せにな。         早妃:はい。では、零央 先輩、お休みなさい。 また、明日!                       俺 :あぁ、早妃、お休み!                 ライン終了。 俺は、自分のベッドに横臥 すると早妃の夏服のセーラー服姿を思い出した。 次の日、早めに起きて、シャワーを浴びた。 そして、デート勝負服に更衣して自宅を出た。 5月の新緑萌える、◯府公園に微風が爽快に吹いていた。                        午前9時50分。◯府公園 東出入口に到着した。 俺は、白いスニーカーにブルージーンズ、白い無地のTシャツ、ブルーのデニム生地のシャツを羽織っていた。  一応、短い髪をジェルでキンキンに立てた。            「お待たせしました!零央 先輩!」 少し遠くから、聞き覚えの ある黒崎早妃の声がした。 早妃は、ピンクのベレー帽に、半袖の赤/黒のチェックのシャツ、黒基調のミニスカ、ナマ足にピンクのスニーカー姿だった。 ピンクを主体色に中々のセンスのある私服である。 両手に早妃は手作り弁当を 重そうな重箱を抱えていた。  俺は、早妃に駆け寄り重そうな重箱を持つことにした。 「零央先輩、ありがとうござ います。やっぱり優しいな 先輩は…笑」 「少し公園の遊歩道歩く か?」 「はい。先輩!賛成であり ます!あ、また『ありま す』口調になってしまっ た!」 「アハハ…。よいよい、 早妃らしくていいよ。」 「あ!先輩、また笑った! これでも、あたし、気に してるんですよ!」 早妃は、ややムキになった。 暫く、機嫌の治った早妃と、公園の遊歩道を歩いた。 早妃は自然と俺の左手を握 ってきた。早妃は小声で 「先輩の手…暖かいな…。 なんか、先輩とあたし…、 彼氏・彼女みたいです ね…。 実際は、剣道部の先輩と 後輩マネージャーなんです けどねぇ…笑笑」 早妃は、両頬を赤らめながら小声で呟いた…。    俺は葉桜の桜の木の前で立ち止まった…。      「さ、早妃…。お、俺の可愛 い彼女にならないか? 駄目かな…?」 俺は意外にもすらすらと、早妃に告白した。                   早妃は一言…。                「はい!了解であります! 黒崎早妃。 今時間より『内藤 零央』 の可愛い彼女になります であります! 宜しくであります!」 早妃は、にっこり笑った。             俺の中で、 『 後輩マネージャー ≠ 彼女? 』 から 『 後輩マネージャー = 彼女 』 に正式に公開情報は更新 された…。  5月の木漏れ日が眩しい 日の事だった…。               『アオハル日記』 ④ 【後輩マネージャー ≠ 彼女?】 2019.08.21 完。
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