16話 校庭の墓地

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「確かに書かれてるな」 「へぇ、これはまたしっかり刻み込まれてるね」 そう話す俺とトウカが見るスマホの画面には、十六話目の怪談と墓の写真が載っていたのだが、そこには今回の投稿者である正木カスミの名前が墓石にしっかりと刻まれていた。 『霧山さん、これが正木カスミが通っていた小学校の情報です』 「助かる」 部下が持ってきた正木カスミの通っていた小学校の情報に目を通せば、そこには確かに小学校が建設される前は、集団墓地があったと記録が残されていた。 「………わかんねーなぁ」 「なにが?」 「なんでわざわざ墓に名前を刻んで相手を死なすのかがな 墓って要するに死んだ人間の家、みたいなもんだろ? それなのに、なんでわざわざ生きた人間の名前を刻んで殺すのかが分からないんだよ」 そう話せば、俺の話を聞いていたトウカは、あぁ………なんて小さく呟きつつもクスクス笑ってからこう答えた。 「幽霊は基本的に理不尽極まりないのも多いけど、今回は家を壊されたのに腹が立ったからって理由だろうね」 腹が立った? そう聞き返せば、トウカはクスクス笑いながらも言葉を続けた。 「パパがさっき言った通り、墓は死んだ人を供養して休めさせるための物……… 要するに死んだ人間の家であって、誰だって家を荒らされるのは嫌だし、ましてや壊されるのなんてもってのほかでしょ? だから半分は墓を荒らされた恨みってことで、手当たり次第に生きた人間を引きずり込むんだけど……… もう半分はね、幽霊は寂しがり屋で欲しがりなんだよ 寂しいのと、だけど強欲で欲しがりな部分もあるから、生きている人間の魂って死んだ人間からすれば輝いて見えて、欲しくなるくらい素敵な物なんだ だから墓を壊す邪魔をするんだよ 特に子供の魂は生命力に溢れているから、宝石みたいにすごく綺麗なんだよ」 勿論パパもね。 そう言って笑ったトウカの目は、黒から爛々と輝く金色に変わっていたのだった………。
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