16話 校庭の墓地

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そして時は流れ午前2時、丑三つ時と呼ばれる時間に、俺はトウカと共に正木カスミの通っていた小学校にやって来たのだが………。 「これは………!?」 そこに広がる光景に俺は絶句していた。 本来なら、ただっ広いグラウンドや遊具などが広がっているであろう校庭に、何十ともとれる墓や卒塔婆が出現していたのだ。 その周りでは、青や赤といった火の玉が飛び交っており、底冷えするような寒さに身を震わせながらも、行方不明の正木カスミを探して墓の前を歩いていたところで、俺はある一つの墓石に違和感を覚えた。 見た目は何の変哲もない、よくある普通の墓石………なのだが、よくよく見つめていると目の前で墓石にガリガリと音を立てて文字が刻まれ始め、やがて音が止まった頃に刻まれた文字を見て俺は思わず絶句してしまった。 目の前の墓石に刻まれた文字………それは、俺の名前だった。 それを見た瞬間、ドクドクドクと何故か心臓が急激に早鐘を打ち、同時に冷や汗まで出てき始めて足がガクガクと震え出した。 壊さなければ………!そう直感的に思った俺は、近くに落ちていた大きめの石を掴んで、墓に投げようとした………のだが 「あっつ!?」 「パパ!」 それを邪魔せんとばかりに、周囲を飛んでいた火の玉が、俺の手めがけて飛んできたのだ。 火の玉なんて触れたことがなかったが、まるで直接火をつけられたかのような熱さが手に伝わり、思わず持っていた石を落としてしまった………。 トウカも俺に近づこうとするが、火の玉に取り囲まれてしまって思うように動けないらしい………。 動こうとしても、すぐに火の玉が邪魔をしそうこうしているうちに、刻一刻と時間だけが過ぎ、とうとう朝陽が昇ろうとし始めていた。 こうなったらヤケだ!と、渾身の力を振り絞って直接石を墓に叩きつけようとした瞬間………。 『ずるぅい………』 「なっ………!?」 墓の下から、子供の手が伸びてきて俺の手を掴んだのだが、一本だけではなかった。 『いいなぁ』 『きれいだねぇ』 『こっちにおいでよぉ』 何本、いや何十本といった子供の手が、俺の手や足を掴み動けなくしてきたのだ。 基本的に刑事として、有事に備えて体力づくりをしている俺だが、一人だけならまだしも何十といった子供の手に掴まれては、流石に身動きもとれず、そうこうしているうちに朝陽が昇ろうとし出し、もうダメだ………!そう思った時だった。
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