18話 かくれんぼ

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百物語集団失踪事件について、霧山爽太の記述 十八話目の事件は、被害者は確かに帰ってきたが俺にとっては何とも言えない………いや、後悔ばかりが残る事件だった。 何故なら被害者は帰ってこれたが、代わりに俺は大事な部下を目の前で失ってしまったのだから………。 あれから、あの森を詳しく調べてみたところ、何でも記録に残っているだけでもかなりの行方不明者が出ていたらしく、本来なら立ち入り禁止と指定が出るはずだったが、戦時中の為にその話が有耶無耶となってしまった結果冴島加奈子は長い年月の間、行方不明になってしまったのだ。 彼女がようやく帰ってこれた時、きっと彼女は帰ってこれた嬉しさはすぐに掻き消されてしまったのだろう………。 自分より年下の妹は、自分よりはるか大人になり子供さえいて、また両親も年老いて更には時代もかなり進み、更には実の家族からも居心地の悪さを覚えられた彼女の苦痛はどれだけのものだったのだろう………。 だが、彼女には失われていない物があった。 それは優しさで、だからこそ最初は意地悪で聞かせた怪談でも、最後は身を挺して親戚の子供の身代わりとなる形で、冴島加奈子は再び姿を消したのだから………。 だからこそ、次に冴島加奈子が帰ってこれた時までに、俺はこの世界をもう少し彼女がいてもかまわないと思えるような、優しい世界にしてやりたいと思う………。 その為にも、まずは目の前の事件を解決するのが先決だ。 何故なら、それが刑事としての使命なのだから………。 十八話目の事件、解決………
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