25話 紫ババア

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二十五話目の投稿者、林田正臣10歳の遺体が発見されたのは、ほんの少しだけ残暑が和らいできた日の午後の事だった。 発見されたのは、林田正臣が通っていた小学校のトイレの天井………。 トイレの天井から変な液体が垂れている、と児童から言われた教師が、天井の板を剥がしたところそこから腐乱した林田正臣の遺体が発見されたのだ。 今年は異様な猛暑のせいで腐乱がかなり進んでおり、死因は司法解剖の結果つい先ほど判明したのだが腹部を鋭い刃物のような物で刺されたのが原因だと分かったが、一部の内臓が綺麗さっぱり亡くなっていたことも判明した。 「ありすぎだろ………」 俺のデスクに積まれた山のような紙の束、それは全てインターネットから林田正臣の通っていた小学校の子供、更には卒業生をあたって紫ババアに関する証言を聞いてみたのだが、あまりの情報の多さに紫ババアは分身の術が使えるのか、それとも単に暇人なのかとさえ思ってしまう。 とりあえず、と一枚また一枚と紫ババアに関する情報を見ていったが、どれも似たような話はあれど肝心の投稿された紫の簪の話に関する詳しい情報が載っていなかったのだ。 林田正臣の通っていた小学校の児童の証言も、簪を探せば助かるという証言はいくつかあったが、その簪がどんな形をしていたかどこにあるかといった情報は一切なく、俺は思わず頭を抱えてしまった。 刑事という生き物は、時に砂漠の中から米粒一つの証拠を探すような困難に追い込まれることはあるが、これは米粒どころか砂漠の中で干からびたミジンコを探すレベルの気の遠さを感じたのだ。 これがまだ生きている人間が犯した犯罪なら失礼な言い方になるが、まだよかったほうかもしれない………。 何せ相手は証拠も確証もフワフワとした存在の怪談話………そこからどう情報を得て事件解決に導くべきなのか、軽く途方にくれてしまう………。 一体どうすれば………だが、事件解決の為にもここで諦めるわけにはいかないと、再び資料をすべて見返して何かヒントを得ようと手を伸ばした時だった。
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