26話 メリーさんの電話

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『あぁぁぁぁぁ!!!どうしてぇ………!日菜子、日菜子ぉぉぉぉぉ………!!!!!』 警察病院、とある病室から響く悲痛な悲鳴に、俺はグッと手のひらを握りしめるしかなかった………。 二十六話目の投稿者である河野日菜子が発見されたのは、三日前の事………。 河野日菜子は8月31日の朝、近所の人が家からリュックを背負って飛び出す姿を見かけたのを最後に行方が分からなくなり、ようやく発見された時には命こそあったものの、極度の栄養失調で身体はやせ細り、よほど怖い目にあったのか看護師がせめてもの癒しにと小さな人形を枕元に置いた瞬間、悲鳴を上げて暴れそして気を失ってしまったのだ。 すぐさま人形は回収されたが、河野日菜子はあれからよほどショックだったのか、未だに目を覚まさない………。 『日菜子!あぁ………日菜子ぉぉぉぉぉ………!!!!』 悲痛な両親の声にも、河野日菜子は全く反応を示さない………。 ピクリとも動かないその姿は、まるで人形のようにも見え、俺は深く息を吐いてから河野日菜子の両親の声を背に、病院を後にした………。 さて、警察病院から署に帰ってきた俺は現在、河野日菜子が事件当日に身に着けていた衣服や持ち物を確認していたのだが、ボロボロのリュックを開けると少しだけ汚れたフランス人形が出てきた。 「もしかして、これが例のフランス人形………メリーか?」 そう呟いてフランス人形を眺める………。 確か、あの怪談には亡くなった従姉妹の形見分けとして貰ったが、勝手に自分の隣に移動してきてそれを怖く思って捨てた………と、書き込みがしてあったが、そんな捨てるほど嫌いな人形を、わざわざリュックに入れてから行方不明になるだろうか? 仮に家出だったなら、リュックには食料や財布が入っていてもいいはずなのに、このリュックにはフランス人形以外、それらしいものが一切入っていなかった………。 投稿者の年齢は11歳、まだ小学校低学年の児童なら分からなくもないが、仮にも高学年の児童がたった一体だけの人形を持って家出をするのはあり得ない。 だとすると、この人形がまさか自らリュックに入ったというのだろうか………?
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