0話 事件発生と百物語

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その事件が起きたのは、うだるような暑い真夏日の事だった。 事の始まりは、一件の電話によるものだった。 8月31日………午後7時を少し回った時間、かかってきた電話の内容は遊びに行った子供がまだ帰ってこないという物だった。 すぐに数人の警官がパトカーで電話をかけた保護者宅へ派遣され、都内を走るパトカーに子供の特徴を伝える無線が入った。 ところがだ、無線を入れてから数分後にはまた電話が入り子供が帰ってこないという連絡が入った。 今度は最初に電話をかけてきた子とは別の保護者だった、すぐにまた別の警察官が保護者宅へと駆け付けだがその間にも次々と子供が帰ってこないという連絡が入り続けた。 多くの警官がそれからパトカーが都内を走り、手が空いている刑事や警察関係者さらには非番であった者達の手を借りて夜が明けるまでそれこそしらみつぶしに子供を探し続けたが、子供は見つからなかった………。 ところが、翌日になるととんでもない事実が判明した。 子供が帰ってこないと連絡を受けた交番との情報を合わせたところ、なんと実に百人の子供が同じ日にいなくなったということが判明したのだ。 すぐさま捜査本部が立ち上げられ、この捜査本部の指揮官であり責任者になったのがこの俺、霧山爽太である。 俺は部下や今回の捜査に加わる刑事達に、いなくなった子供達の特徴や共通点を調べさせた。 流石に百人も子供が一斉にいなくなれば、何か特別な共通点があるはず………そう思っていたのだが事件はそう甘くはなかった。 いなくなった子供達、下は9歳から一番上は15歳までだったのだが全く関りがなかったのだ。 親戚関係や交友関係など洗いざらい探してみたのだが、面白いほどに繋がりが全くないのだ。 何度も何度もそれこそ同じ作業を延々と繰り返したが、そんな俺や今回この事件の担当になった全刑事達を嘲笑うかのように共通点は見つからなかった。 昼も夜もそれこそ24時間体制でこの事件の捜査に多くの刑事が当たったのだが、それでも僅かな手がかりですら見つからなかった………。
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