6話 トイレの花子さん

3/7
925人が本棚に入れています
本棚に追加
/621ページ
「帰れ!!!」 普通の一般家庭よりかは豪華な門前の前で、俺は怒鳴られた挙句水をかけられた。 咄嗟にトウカを庇ったから、トウカ自身に水はかかっていないが、俺のスーツは水を吸い変色してしまった………。 「パパ!」 そう声をかけるトウカに大丈夫と返しながらも前を向けば、フワリと香るキツイ煙草の香りに思わず顔をしかめてしまいそうになってしまう。 現在、俺とトウカは六話目の投稿者である幸松沙里の家にやって来ているのだが、何故か投稿者の話を聞こうとするたびに毎回この目に合っているのだ。 俺をキツク睨む幸松沙里の母親は、PTA会長でたばこをふかしている父親もテレビでよく見かける御堅い職業の人物なのだが、どうにも娘を心配する素振りを見せないのだ。 ここは都内でも有名な高級住宅街と呼ばれる場所で、俺の目の前の門もだが家そのものも如何にも高級住宅と呼んでもおかしくなく、当の本人たちも所謂ブランド品を身に着けているのだが、何故か毎回訪れると帰れ!と怒鳴られてしまうのだ。 「自分の子供が心配じゃねえのかよ………!」 目の前で勢いよく門を閉められてそう呟けば、俺の隣で俺の背広を絞っていたトウカがクスクス笑った。 「だからこそ、今回の怪談は彼女を保護したんだろうね」 「は?保護???」 思わず呆けた声で返してしまった俺に、トウカは微笑んで頷くと俺の背広を片手に持ち、俺の手を取った。 「さあ、パパ今回は特別サービスってやつだよ 確認しに行こうか、六話目の怪談を」 そう言って俺をグイグイ引っ張るトウカ。 そんなトウカに連れていかれた場所は、今回の投稿者である幸松沙里が通っている中学校で、トウカは校舎に入りさらに進むと何と女子トイレに入ろうとしたのだ。 流石にこれは!と慌てて歩みを止めようとしたが、何故か俺の意思に反して何故か足は止まってくれず、結局俺はトウカに引っ張られるがまま女子トイレに入ることを余儀なくされたのだった………。 時刻は最終下校時刻を回った頃で、トウカは三番目のトイレの前に立ちドアを三回叩くと、はーなこさんと明るい声を出した。
/621ページ

最初のコメントを投稿しよう!