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すると………
はーあーい
と、何とどこか間延びした女子の声が聞こえ、ゆっくりと音を立ててドアが開くと、そこには全身血まみれの女子と投稿者である幸松沙里が立っていたのだ。
「幸松沙里ちゃん………だね?」
そう声をかければ、幸松沙里はビクリと身体を震わせて弱弱しく頷いたのだが、何故か血まみれの恐らく花子さんであろう少女は、幸松沙里と俺の間に立つと赤く血で濁った眼で俺を睨みつけてきたのだ。
「沙里ちゃん、お父さんお母さんも心配しているよ、家に帰ろう………?」
そう声をかけて、手を伸ばそうとした瞬間、俺は後ろに強く引っ張られ尻餅をつく羽目になってしまった。
俺を後ろに引っ張ったのはトウカだったのだが、その理由はすぐに分かった。
トイレの立っていた足下、そこが何と鋭い何かで引っ掻かれたのがタイルのはずなのに、裂けていたのだ。
そして、その近くではフーフーと息を荒くした花子さんと、泣く幸松沙里の姿があって、困惑する俺に対しいつのまに瞳の色が変わったトウカが呆れた声でこう言ってきた。
「パーパ、もっとよく見てあげなよ」
トウカの言葉にハッとして、花子さんの後ろにいる幸松沙里をよく見ると、その肌には痣………更には傷に煙草を押し付けられた痕があったのだ。
それと同時に、フワリとどこかで嗅いだことのあるタバコの香りがして、もしかしてと思った俺はなるべく温和な声で幸松沙里に話しかけた。
「沙里ちゃん………約束しよう、刑事霧山爽太の名に懸けて、命に懸けて約束するよ
必ずキミの安全を、そして未来の希望を約束する
本当の恐怖の場所から助けることを約束する
だから正直に答えてほしい………
その痣は、その傷は………その痕は………
ご両親につけられたものだね………?」
そう問いかければ、幸松沙里は涙を流しながらも無言で頷き、俺は一度息を吐いてからもう一度幸松沙里に、そしてトイレの花子さんに向かって口を開いた。
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