925人が本棚に入れています
本棚に追加
/621ページ
「怖いからもあるけどさ、百話語るとそこに本当の恐怖が待っているからだよ………
百話語れば真の闇が、本当の怪異が起こるからね」
クスクスと俺を見て笑う子供。
年のころは9歳か10歳くらいだろうか………なのに、俺は今この目の前の子供に恐怖を感じていた。
刑事になって早数十年、中には猟奇的な殺人犯を目の前にしたことがあるが、この恐怖はそれとはまた違う、本能的な恐怖を感じるのだ………。
「おじさんさ、子供が百人いなくなった事件を捜査してるんでしょ?
子供達がどこにいなくなったか………知りたい?」
「知っているのか!?」
思わず子供の肩を掴めば、目の前の子供は知っているよと平然と答えた。
「知っているよ、あの子達は百物語に飲まれてしまったのさ………」
「百物語に飲まれた………?」
「さっきも言ったでしょ?百物語は百話語れば真の闇、本当の怪異が起こるって………
子供達はこのサイトで百話怪談を語った、そして怪異に飲まれた………
生きているかもしれないしもう生きていないかもしれない、きっと人の形をしていない子も中にはいるかもしれないけど、それでもおじさんはこの事件を解決したい………?」
子供がジッと俺の瞳を見つめてくる。
じわりじわりと内側から恐怖がまるで全身を飲みこむかのように浸食してくるのを感じながら、俺は震える身体を無理やり動かして頷いた。
「あっ、あぁ………!
俺は刑事だ、例え結果がどんな結末であろうと必ずこの事件を解決して見せる!」
そう叫ぶように答えれば、子供はニイと目を細めると口を開けて笑った。
その口から見える白い歯は、小さな子供の歯のはずなのに鋭く尖っていて先ほどまで俺を見つめていた黒い瞳は爛々と金色に、まるで獲物を狙う獣のように輝いていた。
「あ、ああ………!」
この子供は人間じゃない!足がガクガク震えるのが自分でもわかる、だが、ほんの少しの刑事としてのプライドが何とか崩れ落ちるのだけは阻止してくれた。
「いいよ、おじさん………ううん、霧山爽太さんの事件解決に付き合ってあげる
それは僕の為でもあるからね」
「僕の為………?」
「こっちの話!あ、僕の名前は青灯トウカ!これからよろしくね!」
そう差し出された手を握れば、小さくも柔らかい子供特有の手の感触がした。
事件発生から一週間、ほんの少しだけ事件に希望が見えた。
最初のコメントを投稿しよう!