向学と雑感

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向学と雑感

 古文。  古今和歌集。 「今日はちょっと面白い歌を紹介しよう。」  先生は言った。 「    『吹くからに 秋の草木の しをるれば                むべ山風を 嵐といふらむ』     平安時代の歌人で官人でもあった文屋康秀(ぶんやのやすひで)の和歌だ。  この意味がわかるかな。」  誰も手を上げない。 「無理もなかろう  では解説だ。   『吹くとすぐ しおれてしまう 秋の草              だから山風 嵐というんだ』  現代語訳するとこんな感じか。  つまり、山から風が吹くと、秋の草はみんなしおれてしまう。  よって、『山風』を『あらし』という。  山に風と書いてあらし、これを「荒らし」とかけているんだ。」  少しだけ笑いが起きた。 「ねえ、今度勉強教えてよ。」 「ああ、別に構わんが。」 思い切って話しかけてみてよかった。 さらに勇気を出していう。 「じゃあ、おうち、言っていい。」 「・・・・まあ、いいだろ。」 「わあ、ありがと。」 それから、その日の教材などを用意するのに夢中になった。
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