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日本の精神の体現は、高潔な生き方を志向する武士よりも、先祖から受け継いだ数反の田畑を、そこに流れ出る清濁併せ呑んで守る農民の姿なのかもしれない。
―――ああ、反というのは古い日本の農地面積を表す単位で、一反がだいたい畳百畳分だ。
それにこうした人たちは、世に盗人の種はつきまじというが、もし罪を犯せば過酷な処罰が待っていた。
それこそ武士に与えられた名誉などとは遠い、ひき回しや鋸引き、晒し首などがあった。
ここでも―――」
先生の話が遠く聞こえた。
切腹。特攻。
国家のリストカット。
一学期最後の音楽は、これも近代イタリアの作曲家レスピーギ作『アッピア街道の松』。
1924年に発表された、連作交響詩『ローマの松』の一部。
イタリアにも松はある。
ローマ時代から、軍の行進路として石畳で舗装されたアッピア街道。
その両脇に生えた松の下の勇壮な行軍を表した曲らしい。
トランペットの重厚な旋律を主体に曲は進む。
「どこの国でも、街道とは交易や軍事の重要な役割を担うものであり、その国の文化を象徴するものでもあります。
この松街市を通る中川道もそうですね。
あの道は江戸時代から参覲交代の際に使われ、その頃から人の通りも多かったと聞きます―――」
また遠く聞こえる話は聞き流し、放課後。
聖くんが席に一人。
うかなそうな顔をしているが、見世子はいない。
「聖くん、なんか元気なさそうね。」
「ああ、家で、ちょっと、な。」
「何、ご家族と喧嘩でもしたの。」
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