夏の祭り

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夏の祭り

 この街には、夏から秋にかけて二つの大きな祭りがある。  一つは、町外れにある、2000年以上の伝統を持つという『高ノ(たかのみや)神社』より、江戸の昔から続く、街の中央を通る街道『中川道(なかせんどう)』に神輿を担ぎ出す高ノ宮祭り。  そしてもう一つが、文化部が充実していることが県内でも有名で、少し遠方からの通学者も多いこの松街高校の文化祭、『邇翔祭(じしょうさい)』だ。  子供からお年寄りまで、多くの人がこの両方に訪れる。  六月。学校では、この準備に、私たちはもちろん様々な部やクラスがそろそろ追われている。  そして、地元の祭りの方。  これにも、私は幼い頃からずっと参加してきた。  小学生までは家族、中学に入ってからは友達と。  そのための浴衣も持っている。  体に合わせて買い換えたもので、今のは三代目。  好きな色である青を基調としたもので、そこに椿をあしらったものが店にあったので、中学2年の時に買ったもの。  それを着た、一緒に行きたいと内心――― 「聖くんおはよー。」  また、見世子に先を越される。 「ねえ、お祭りっていく。」 「ああ、人並みには、な。」 「それでね―――」  その時チャイムが鳴り、田嶋先生が入ってきたので。 「じゃ、その話はまたね。」 「ああ。」  内心胸をなでおろしている自分がいた。
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