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その目はどこまでもまっすぐで、鼻の下は少しも伸びていなかった。
それを見て、知沙の胸に衝撃が走る。
もしかしたら自分は、大きな勘違いをしていたのかもしれない。
そう思って、大哉に言葉を返そうとする。しかし、
「大哉!」
そう名前を呼んだところで、大哉は目を閉じる。
ぐったりとして、もう少しも動かなくなってしまった体を見て、知沙は取り返しのつかない事態を起こしてしまった、と言う事悟る。
私も愛しているよ、と大哉への愛の言葉を言おうと、知沙はゆっくりと口を開く。
しかし口から出てきた言葉は、
「どうして私、信じてあげられなかったんだろう……?」
という、自責の言葉。最後に愛の言葉さえ、口にできない。
手に少し残ったコーヒーのしみを見て、残り物は静かに、無言の涙を流した。
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