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早くもその作用が出始めたのか、大哉は床に倒れこみ、うっ、と鈍い呻き声を上げて、もがき苦しむ。
両手で喉元を抑え、身を捩じらすように腰をくねくねと動かし、更には両足もバタバタと動かして、苦しむ大哉。
「大哉……どうして……?」
突然の事に、知沙は目を見開き、ただ呆然と大哉を見つめる。
そんな知沙に、大哉は苦しそうに、小さな声で呟く。
「おかしいと、思ったんだ。……だって知沙、無糖派のはず……だろう?」
その言葉に、知沙ははっとして、大哉を見つめる。
もがき苦しむ大哉を見ているうちに、自分が何をしてしまったのか、何が起きてしまったのかについて知沙は次第に頭の中で、整理がついてくる。
冷静になった知沙は、慌てて大哉に駆け寄る。
「大哉!大哉!」
元々、自分が毒を飲むはずだった。だから、解毒の仕方など分からない。
苦しむ大哉を見て、知沙はどうする事も出来ずに、ただ彼の名前を呼ぶ。
すると不思議な事に、あんなにももがいていた大哉の動きが、一瞬、ぴたりと止まる。
しかしそれが、事態が好転する兆しではないという事は、毒について何も知らないと言っても過言ではない知沙にも、何となく理解する事ができた。
「知沙……愛しているよ……」
弱々しい目で知沙を見つめる、大哉。
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