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かくしごと
「私、大哉との間に子供ができたの」
玄関先でそう勝気な笑みを浮かべる彼女を、知沙は告げられた言葉の意味もきちんと理解できぬまま、部屋に上げざるを得なかった。
三日前―。知沙が一人暮らしをするアパートの部屋に、突然、そう言って押しかけて来た彼女。
大哉とは、知沙が二年も付き合っている彼氏の名前だ。
全く見知らぬ女から告げられた言葉に、知沙は衝撃を受けたものの、詳細を聞かなければいけないという思いに駆られ、すぐに彼女を部屋に上げ、話を聞く事にした。
彼女の名は、三澤杏菜。
知沙よりも二つ年下の二十二歳で、大哉が職場の男性陣と一緒によく飲みに行く居酒屋で、店員として働いている。
そんな杏菜はある日、客として来店してきた大哉と知り合い、やがて恋仲になり、お腹に子を授かった。
しかしいざ授かった事を報告すると、その時になって初めて、彼女がいるから困る、と大哉に告げられた。
……杏菜の口から聞かされたのは、そんな内容だった。
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