2

2/5
前へ
/7ページ
次へ
待ち合わせの場所は電車を降りてすぐのファストフード店。 約束の時間にはまだ早いけど腹も減った。先に食べて待っていよう。 と思ったら既にいるし! ガラス窓越しに葵が俺に小さく手を振ってくる。 しかも足元にはちょっと大きめの白い紙袋。 アレはやはり……アレだよな。 「早かったね。用事あるって言ってなかった?」 「あー。そーだっけ?」 かっこつけて忙しい、みたいなこと言った気がしないでもない。ほら、男にはあるじゃないか?そーゆーとこ。プライドっつーの? ふうん、と言いながら彼女が飲んでるのは多分いつもの特製ストロベリーチョコシェイク。 いや、元々はストロベリーシェイクなんだよ。店にはストロベリーシェイクとチョコレートシェイクのミックスはないんだから。 ストロベリーチョコシェイクは葵オリジナルだ。 葵はいつも持ち歩いている純正ココアを食べ物にふりふりするのが、趣味なのだ。 いわゆるコク?フレイバー?よく分からないけどあれこれ振りかけている。 同級の葵は既にデザイン学校への進学が決まっている。俺の受ける大学の斜め前にあるっていうのがミソ。 これは何がなんでも合格決めないといけないところだよな。 「ね?その照り焼きバーガーさ。ココア掛けてみない?」 「かけません。」 お前の趣味に俺を巻き込むな。 「ちぇっ。」 ちぇじゃない。 俺は黙々とバーガーを口に放り込む。少しでも隙を見せればココアパウダーを振りかけられてしまう。 黙々ともぐもぐ。黙々ともぐもぐ…… ぐっ、喉に引っかかった。 コーヒーに手を伸ばしたが置いたところにない。俺のコーヒーはどこだ? と、葵が俺のコーヒーの蓋をあけ始めている。 「おいっ!止めろよ。」 喉に詰まりかけた肉が一気に食道を抜けて胃に落ちた。 が時既に遅し。お粉を振り終え、すんと鼻をすすった。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加