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……御守りは、腹巻の中に入れていこうかな。既に身につけていく気になってるよ、俺。
「大丈夫よ、貴方はこの一年頑張ったわ。やれることは全部やってきた。それは私が証明する。だから後は……」
葵がテーブルの上で腕を組んで俺を見る。
「後は………窮すれば通ず、よ。」
………。
確かにな。確かに案ずるより産むが易しの類義語だけどな。
なんか。なんか違う。
俺の頑張り知ってるならそこはさ、なんつーか。
大体、案ずるより産むが易しってのは、ゴタゴタ言わずにとにかくやってみな、取り越し苦労はするなって意味なんだよな。確かにそれは間違ってるわけじゃない。
だからこの場合はさ。それとは反対の言葉になると思うんだ。
だけど。
俺のためにわざわざ八幡宮まで行ってくれた葵。そこまでやってくれるカノジョは中々いないって。
葵の瞳がきらきらと輝いてる。彼女の体中から俺への応援歌が聞こえるようだ。
ピンクの腹巻きと同じくピンクの安産守りに目を落とす。
どちらも桜の花びらを思い出す色だ。
「サンキュ。俺頑張るよ。」
ガラス窓から外を見れば、つき抜けるような青空が広がっている。
試験まであと十日程。箱をキュッと握る。
「家に帰ったら、これ腹に巻いて気合入れ直す。」
葵に向けてニカッと笑う。
反対に葵がハッと口元を覆った。なんだよ。惚れ直したか?
「ごめん、気付かなかった………ふんどしの方が良かったんだね?」
なんでそーなる!
完
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