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それだけではなく、アルディルは寝る時間も多くなった。
欠伸も増え、先程のようにふとしたら眠る事も増え、いつも眠そうにしている。
それはきっと、〝期限〟が近づいているからなのだろう。
それが来るとどうなるのかなど分からない。
でも今の状態ではいられない事など、火を見るよりも明らかだ。
アルディルの話によると、魔力を失い記憶を失い、最終的に自我まで失うと言っていたが……もし自我を失ったら、それでも彼はここに居るのだろうかと考えると、リースは不安でたまらなかった。
この魔法は魔界が仕掛けたもの。
だというのなら、自我を失った先、アルディルは攫われてしまうのではないか?
確信じみたその考えに捉われ、早くこの魔法を解かなくてはと思うものの、掠りもしないそれに焦りを隠せなかった。
「アルディル」
腕に抱いた愛しい人を掻き抱き、額に口づける。
転移魔法でギルドの裏口まで行くと、そこからは横抱きにしてアルディルの部屋までリースは連れて行った。
ベッド横の椅子にて先程図書室の方で借りた本に目を通していると、アルディルの身じろいだ気配を感じそちらに目線を移した。
「アルディル?」
呼び掛けてみるものの彼からの反応はなく、リースの方へと目を向けるもののリースの事を捉えていない瞳に、嫌な予感がして椅子から立ち上がったリースはアルディルの顔を覗き込み、頬に手を伸ばした。
「あ……」
ハッとしたようにビクリと一瞬跳ねた後、徐々に感情が瞳に宿っていく。
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