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「リー、ス?」
「はい」
「……すみません」
上体を起こし、周りを見渡し、状況を察したらしいアルディルは、開口一番にそう口にする。
「また、倒れて……貴方に、迷惑を掛けてしまいましたね」
「迷惑など……俺は、貴方様の恋人のはずです。迷惑なんて、いくらかけられても良い」
「リース?」
言いながら声が震え始め、アルディルは名を呼びながら「すみません」と謝るリースの頭を抱えた。
「謝らないでください。……僕の、せいなのでしょう?」
「せい、という訳ではありません。ただ……このまま、手の届かない所へ、貴方様が行ってしまいそうで……怖くて」
「それは……」
倒れるたびに感じる恐怖が、もう耐え切れないとばかりに身の内から溢れだす。
溢れたものは涙となり、それは止めようにも止められなくて、せめてと既に少々濡らしてしまっているアルディルの服をこれ以上濡らしてしまわないように離れようとした。
けれど頭に置かれた手は案外力強くて、両手で抑えられると、感じる温もりにもっと涙が溢れだしてしまい。
諦めたリースは、両手をアルディルの背へと回した。
「いなくならない……とは、言えません。この終わりがどんな形となるのか、僕にも分からないので」
「……っ」
「ですが、貴方への気持ちは変わる事はありませんよ……これだけじゃ、ダメですか?」
優しく、子供にするようにアルディルはリースに語り掛ける。
未来なんて不確かだ。確かなのは、互いの間に宿る感情のみ。
「好きですよ、リース」
そしてそれを証明するようにアルディルは言葉にして伝え、呆けたように顔を上げるリースの唇に、自ら唇を重ねる。
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