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空から覗く太陽の光は木々に遮られ、様々な緑色が風に揺られ音を漏らす。
春先も近いからか生暖かい風は、僕と、そして隣にいる水帝にも当たり、目の前に屍累々と連なった魔物らの汚臭をも運んできた。
最期の呻きをあげる彼らを見て、水帝が口を開く。
「さすがです、零帝様。S級も何匹かいたはずなのに、一瞬で倒してしまわれて……」
「いえ。結局は貴方の助けも借りてしまいましたし……私も、まだまだです」
「俺は貴方様の多少の援助をしたに過ぎません。俺がいなくても、このような壮絶な光景は出来上がっていたでしょう」
「それでも、助けていただいたことには変わりありません。貴方がいなかったら、こんなに早く片付けられませんでした。ありがとうございます」
「こちらこそ、貴方様の手助けができて嬉しかったです」
ふわりと彼が微笑む。それに対し僕もフードの下で微笑み、目の前の魔物に手をかざした。
火の初級魔法だが魔力によって広範囲に作用できるそれは、しかし魔力を注ぎ続けなければならない。木々を燃やさぬよう調節し、その状態を維持する。
僕の調節が終わったことを悟ったのか、彼の手が僕のフードに触れてきた。
「木の葉がついていました」
「……ありがとうございます」
子供じみたことをしてしまったことに心の中で恥じ、表面だけは冷静に取り繕う。
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