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食物連鎖
「これから昼飯買いに行くけど、何かいる?」
「うん。サンドウィッチとフランクフルト」
ホットドッグを片手に答える。彼女に感心したのはこれで何度目だろうか。
女という生き物は好きな男の前では食を細くし、自分をか弱い生き物に見せたがるが、一方で慣れ親しんだ男の前では、遠慮なくその食欲を開放する。
彼女に頼まれた物を買いに街まで来たが、どうせすぐにお腹が空いたと騒ぎ出すので、他にもいくつか追加で購入した。女は放っておいても勝手に太ると以前友人が言っていたが、彼女の場合はどうも対象外のようだ。彼女と出会ってもう数年経つが、未だに太った所を見た事がない。友人は僕に同情していたが、僕は気長に待つ事にしていたので、友人の言葉はそんなに重く考えていなかった。
「はい。頼まれての」
彼女は僕が胸いっぱいに抱えた食料を見て目を輝かせていた。
「わぁ! ありがとう! あれ? ところで君はもう食べたの?」
彼女は僕に気遣ってか、そう尋ねた。
「あぁ。僕はもう済ましたから、あとは君が食べていいよ」
僕がそう言うと彼女は子供のような笑顔になる。
実の所、僕は全然食事にありつけていない。それもこれも彼女のせいなのだけど、面と向かって彼女に言うことが出来ない事情がある。
狼男という生き物は太った女しか食にせず、痩せた女と男は全く食べない。
あまり知られていないが、誰でも食べる訳ではないのだ。
まずは自分の好みの女を選ぶのだが、これは単純に骨格や身長などで一人からどれだけ多くの栄養が取れるか判断し決める。
僕の場合は小柄の女を短期間で太らせて食すのが好みなのだが、彼女はもう何年も口にはさせてくれない。食べるのが好きな女は格別美味いのだが、彼女のように太らなければ意味がない。今日もまた彼女は僕の気も知らずに「美味しい」と喜びの声を上げていた。
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