絶望のblack

1/2
43人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ

絶望のblack

「…………は?……なんて?」 「だから……ミッコが、一成(イッセイ)に渡したいんだって。チョコ……」 オレの口調に、明らかな苛立ちを感じ取ったのだろう。 妃呂(ヒロ)の語尾はだんだん小さくなっていき、 ゆらゆらと泳がせた視線は、最終的に地面へと着地した。 完全に俯いた彼女を目の前にしてオレは、 頭に浮かんでは口にする前に消えていく言葉達を、必死に受け流して冷静を装うことで精一杯だった。 ちょっと待って。 誰だよ、ミッコって。 いやそこはどーでもいいんだけど オレはそのためにお前にここへ呼ばれたの? バレンタイン当日の放課後に、 こんな人気のない校舎裏に二人きりで、 お前からじゃなくて 顔も思い浮かばない他の女子からのチョコレートを仲介される為に? なんで よりによって それをお前の口から聞かなきゃなんねーんだ…… 死にたいほどの気持ちを抑えて、 「……あっそ」と一言だけ振り絞った。 あぁ、そう。 そういうことかよ…… ……オレ、フラれたのか。 妃呂はチラリとこちらを見ると、何かを言いたげに口を開く。 でもすぐにぐっと口を噤むと、 「……じゃあ……伝えたからね!」 そう言い残して、 オレの横をするりと走り抜けて去っていった。 「まじかよ……」 誰にも届かないほど小さな声で呟いて、宙を仰ぐ。 6年だよ、6年。 バカみたいにずっと一途に片想いしてた妃呂への恋心は、 最悪なフラれ方で呆気なく砕け散った。 まさに不戦敗。ダッセェ。 どうせ粉々になるなら、 潔く告白して玉砕するほうがいくらか諦めがついた……
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!