僕らは手紙を届けるために

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 雪がやんだ。  空が明るくなり、雲間から光が差す。  あれは天使の梯子と言われるものらしい。  空港でベルが鳴り、飛行禁止命令が解除された。  僕は彼女がくれたホットドッグを食べた。  冷たくなっている。  無理もない。  時間が経っているし、この寒さの中だから。  増し増しのピクルス。  僕、ピクルス苦手なのにな。  君もその事を知っているはずなのに。 (……そうか、わざとか……)  彼女のイタズラっぽい笑顔を思い出す。  もう暖かい彼女に触れられない──そう思うと涙が出てきた。  それでも涙を拭い、曇りなき目を開いて僕らは飛ばなきゃいけない。  ホットドッグを平らげると、僕は大切なバッグをポンポンと撫でながら飛行場へと向かった。  ──さぁ、そろそろ行こうか。  僕らは手紙を届けるために。 【end】
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