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「わーい、おいしそ!いただきまーす」
上機嫌に大口を開けるや否や、あっという間に半分ほど食べてしまう。
そのスピードだけでも充分驚きなのに──。
「んーおいしい!もう一ついけちゃうかも!」
なんて言うもんだから、さらに驚きだ。
一体この小さな体のどこにそんな胃袋があるのか。
思えば、彼女は学生時代から大飯食らいだった。
あの頃とちっとも変わっていないのだ。
「それは食べ過ぎじゃないか?」
さすがに窘めると、彼女はムッとする。
「何よー、配達に響くって言うの? もう、相変わらず小言の多い囀り屋さんだなぁ、パトリックは。いつか伝書鳩になっちゃうんだから」
「…………」
「嘘よ、嘘。はい、あげる。パトリック、マッシュポテト大好きでしょ?」
「…………」
ズイと差し出されるそれにきょとんとしながらも、キュルッと喉が鳴る。
彼女は、学生時代からの僕の好物を覚えてくれていたのだ。
はむっと一口、ホットドッグを齧る。
「おいしい……」
「でしょー?」
まるで自分の手柄かのように、満面の笑みをたたえる彼女に──。
僕は、胸が切なくなった。
喉の奥が熱い。
……マスタードもケチャップも、かけすぎなんだよ、エリー。
「さてと、雪も止んできたし、そろそろ行こうかな」
空を見上げながら、泡雪から粉雪に、そして細雪へと弱まっていく白に手をかざすエリー。
大切なバッグを優しくポンポンと叩いては小さく頷き、僕に向き直る。
そして彼女は──
背中に白い羽を大きく広げ、淡く微笑んだ。
「じゃあね、行かなきゃ。みんなに手紙を届けるために」
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