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ジャングルの奥深くに来たようなむんむんとした空気に圧倒されながら、一歩一歩踏みしめながら足を進めた。
今冬なのに。あら、もうすぐ春かしら?
ザクッザクッ、サクッサクッ、サッ、サッ、
次第に高い木が消え、地面が平らになってきた。暑さもない。
そして森林を抜け、見えた景色は───
この世とは思えない、別世界だった。
まず、真っさらななんにもない地面。
ベージュと茶色を混ぜたような色をしてる。
木も雲も草もありんこも本当に何もなくて、空の青と地面の茶色の境の線がくっきり見えちゃうくらい。
もちろん、音もしない。
風の音もない。
不思議なことに、わたしの歩く足音もしなかったの。
正真正銘、生まれ変わりの地だったのだ。
はあーっとため息をもらしちゃう。ため息って、感動したときにも出るのね。不思議。
ずーっとこの時の止まった世界にいたい。ずーっとこの地平線のかなたまで続く地を歩いていたい。
でも…それはムリだよね。
そう、わたしはかなちゃんを殻から出すためにここに来たんだもん。
手遅れになる前に、ね。
えーと、生まれ変わりの方法は…
ガサガサとメモした紙をポケットから出した。
『実は、この何もないような地にも大きな穴が存在する。歩いていればすぐ見つかるので、そこへ行く。』
あった。
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