0人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
睡魔は布団の中以外でもやってくる。
ある年の冬。
かなり寒い日であった。
1人の大学生が、寮の共用スペースで教科書とにらみ合っていた。
先日寝坊により受験できなかった科目の追試を受けるためである。
他の学生は試験の終わりとともに長期休暇に入り、旅行に宴会に出かけ、スペースには彼以外誰もいない。
そんな彼のテスト勉強。
モチベーションはかつてないほど高かった。
というのも、本来この科目では追試の実施はなかった。
しかし。
『冬だし起きれないよねぇ。しょうがないよー』
そんな教授の一言から、追試が行われることとなった。
この単位獲得のチャンス。
そして、教授の期待を絶対に裏切るわけにはいかない。
あくびを噛み締め、時計に目を移す。
23時50分。
追試当日は明日と徐々に近づいている。
しかしここまでの試験勉強は順調そのもの。
徹夜して勉強すればテストは必ずできる。
彼には自信があった。
残る敵は。
睡魔である。
だが、彼も進化を遂げてきた人間の一員。
対策は考えてあった。
それは、布団のある自室で勉強しないというモノである。
これまで、あの布団のせいで何度も何度も辛い思いをしてきた。
しかし、今回は違う!
あの忌まわしき眠りの化身はここにはいない。
最初のコメントを投稿しよう!