神崎美葵《かんざきみき》

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一日目、今日は、お客さんが来なかったからいろいろ教えてもらった。 「あの一つ聞いていいですか?」 「ええ、いいわよ。」 ずっと気になったことを聞いてみる。 「ムーンさんとスピネルさんはどんな関係なんですか?やっぱり兄妹なんです か。」 するとムーンさんはちょっと考える様子を見せてから言った。 「そうね、居候?」 「居候なんですか!?」 つい声が裏返ってしまった。それにしてもなんで居候なんだろう。 「じゃあもう質問無い?」 「あっ、もう一つ。ローゼは何で狐のお面をかぶっているんですか?」 「それは分からないの。なんでかしらね。」 「あっ、そうだ私も含めて4人しか会ってなかったわね。あともう一人いる の。」 もう一人いるんだ。 「名前は何ですか?」 「‘‘ガーネット‘‘よ。そのうち紹介するわね。じゃあ、次の段階ね。」 「接客とかはできる?」 生まれてこの方一度もやったことありません。 「じゃあ、教えるわね。まずは…… と教えてもらった。 要点をまとめると 1.自然な笑顔で対応する。 2.身だしなみとTPOを考えて整える。 3.言葉づかいをきちんとする。 4.アイコンタクトを心がける。 5.パーソナルペース(自分だけの空間)に踏み込まない。 ダメなことは、 1.指をささない。 2.べったりと張り付く。 3.話を否定で終わらせる。 4.忙しいから(忙しいことはないと思うけどと言っていた)といってお客様を ないがしろにしない。 らしい。 「わかった?」 「じゃあ、頑張ってね。お客様が入ってきたらこのカードを渡してね。もし、 受け取らなかったら接客はしなくていいわ。受け取ってもらえたらこの箱を渡 して、代金をもらってね。じゃあ、頑張ってね。」 渡されたカードは群青色で金色に縁どられていた。箱のほうは桐の5㎝ぐらい の小さな箱だった。 だけど待てども待てどもお客様は来なかった。 そのことをムーンさんに言うと、 「今日は、なかったのね…… と言ったその顔に白銀色(ムーンライトカラー)の髪と、透き通るような水 色の瞳。 私は見とれてしまっていた。 「やっぱり来ないのかな……」 「どうかしたんですか?」 「じつはね、この前このお店に来てくださいって言った人がいるの。なのにい くらたっても来ないから。……もうすぐタイムアウトになっちゃうのに。」 「タイムアウト?何のことですか?」 「なんでもないわ。セレナちゃん」 「そうですか。」 そう言って一日の幕は閉じた。
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