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そこから初音病が発動するかと思いきや、驚くほど真面目に書かれていた。
父は医学部受験に突入するが、何処かでこんな人間が医者になっていいのか?という疑問を抱きながら勉強を続けている。
「兄の様にずば抜けて成績がいいわけではなかった。無理してなんとか二流の医学部に入ったそういう感じだ。兄貴の様に一流の医学部でいい成績で、卒業なんて出来ないだろうと思えば思うほど、大学に入ってからの勉強は適当になっていく。」
「以外……お父さんカッコいいイメージしかなかった。」
「僕は少し聞いてた。自分も悩んでたし。」
「お兄ちゃん優秀じゃない?トップ卒業でしょう?」
「医者になってから成績なんて意味ないんだよ?慕いやすさと腕。患者さんに嫌われたらお終いだしな。」
「では?お父さんは何処から真面目になったかな?」
ノートに目を戻す。
「黒さんが戻って来て、おじいちゃんに変わり協力者にならないかと言われる。いざとういう時に血の供給源が欲しいらしかった。
黒さんの血の研究も始めた。おじいちゃんは最後まで気にしていた。
死ねないあの人を、本当は寂しい人だから、そう言って心配していた。
おじいちゃんへの恩返しのつもりで協力者になった。」
「なるほど…。でも、ずっと眷属には会わせてもらえないんだね。」
「うん、その理由は想像だけど、て、ここに書いてある。」
「黒さんは僕があの時のお姉さんに会いたいと知っていて、時期が早いと答えた。
その時は不思議だったが、今は分かる。
僕が歳をとり、初音さんの変わらない若いままの姿を見た時に、怖がってでも、その気持ちが憧れのまま終わればいいと思ったのだろう。
年上のお姉さんが、10歳以上下になった時に引き合わされた。
ただ、どうしてもっと離れてからにしなかったのか…考えた。
もしかしたらあの頃、双子が近くに来ている事に気付いていたのではないだろうか?
自分にもしもの事があった時、残される彼女に味方を用意しようとしたのではないかと思う。」
「聞いたことあるか?」
「黒さんは一切、話さないから。」
「そうか。しかし…ここまでまとも過ぎて驚いたな。」
少し休憩しよう、とお茶を入れに行く。
「コーヒー入れられる?お父さんの。」
「いいけど、同じ味にはならないと思う。」
「よろしく。」
海音がノートに目を落とした。
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