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「この辺りからお父さんは少し真面目になるんだね?ちゃんと勉強して、医者になって、でも家は嫌で違う病院に就職してる。」
コーヒーを渡してノートを見る。
海音は嬉しそうにコーヒーを飲んだ。
「美味しい。お父さんの味だ。」
「そうか?父さんのブレンドは難しい。そっくり同じにはならないな。」
「十分…懐かしい。」
「んー…黒さんの血の研究をする為に実家経営の病院に戻った。
経営者の息子、坊々、部屋をもらえる、特別待遇だ。研究もしやすかった。
ま、そうだろうな?」
そのページを読み、僕は言う。
今の院長は僕の従兄弟だ。
その前は伯父。
父親と兄が院長だった父さんの方がずっと自由に動けたはずだ。
そこから先は初音さんが沢山出てくる。
父の人生の大半を占める、「初音さん」。
「憧れの人が目の前にいる。
可愛らしいから、初音ちゃんと呼んだ。
彼女の人生を知り人柄を知り、優しさに触れ、それは失礼だと思う。
「初音さん」は、かけがえのない人だ。」
「海音~覚悟しろ?こっから初音さん病だぞ?」
読み進めると、結婚するまでは苦悩も有りつつも普通だった。
母のノートに書いてあった、黒さんの協力者であった望月という男の事、そいつがした事を母さんより細かく、見たままに書いてあった。
それは衝撃で腹が立った。
そこから結婚した後に進んだ。
夜も随分更けてきた。
「寝るか。明日も仕事だし。」
「だね?私も帰って寝ないと。とりあえずまともだったじゃない?
お母さんのノートと後半は対になってるみたいな感じ?」
「まぁな?まだ分かんないぞ?」
笑いながら海音は帰って行った。
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