もう一人の…。

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もう一人の…。

「北見 護 人生ノート事件」が片付き、ノートは僕の部屋の机の引き出しに入れた。 僕が死ぬ前には、海音に渡そうと思っていた。 日曜日になり、久しぶりに家族で過ごした。 子供達も部活だ、友達と遊びだと、家にいない事が多くなって、日曜日に揃うのも珍しかった。 姉妹でテレビゲームに夢中だ。 時々、僕や菜月を呼んでは参加させる。 反抗期は多少あったが、お父さんうざいと言われる事も、一緒に洗濯しないで!と言われる事もなかった。 小さい頃から洗濯干しを手伝わせて、父の下着も平然と触っていたからだろうか? 「なあ…お父さんの下着と一緒に洗うのって嫌か?」 背中に聞いてみる。 正面を見ては怖くて聞けないのだ。 「んー?嫌じゃないけど?」 「別で洗えるならそうして欲しいと思う時もある。正直に言えば…。」 下の子の言葉にショックを受ける。 「でも、二度手間でしょ?お母さんが大変。そこまで嫌なら自分の下着だけ手洗いする。それが筋でしょ? そこまで嫌ではない。だから別にいい。」 「自分で洗う手間より、我慢出来るって事か。」 複雑だがちょっと安心もする。 「昔ね?」 結月が続けて言う。 「うん?」 「おばあちゃんとこに遊びに行ってたの。行っちゃダメって言われてたけど、こっそり。私にはおばあちゃんて、不思議で変わってて、優しくて大好きだった。お話するの、楽しくて…。」 「そうなのか?」 「結月は良く預けてましたからね。」 困った様に菜月が言う。 「おばあちゃんとテレビ見てて、そういうインタビューやってて、おじいちゃんが海音ちゃんやおばあちゃんにそんなこと言われたらショックで死ねるって言ったの。 おじいちゃんて、邪魔にならないの?って聞いたの。だって一緒にいる間に何回もおばあちゃんの名前呼んでるし、煩そうに思って。」 「孫にさえ、思われてたか……。」 僕がため息を吐くと菜月は笑っている。
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