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◇◇◇
文化祭の時、彼と噂になった人がいた。
僕は、その人を知らなかったけれど、友人から、どうやら彼のサークルの女の先輩だということを知った。
大学入学以前から、そういった噂に絶えなかった彼ではあるが、あの夏祭り以来、初めて聞いた噂だったので、余計に僕の心を揺さぶった。
それ以前は、そういった浮いた噂なんて気にもしなかったのに。
それに、僕と彼のサークルは異なるので、彼のサークル内での様子を知らなかったのもあり、不安に駆られていたのを覚えている。
とりあえずその噂になっているお相手だけでも見てみたいという好奇心に駆られ、彼のサークルを覗き見てしまった。
相手は、彼の美貌にも引けを取らないほどの美女だった。
ーーかなわない。
そう瞬時に悟った。
かなうもかなわないもない。
まず、僕は土俵にも立つことすらできない。
張り裂けそうな胸の痛みとともに、彼に恋していることを自覚した。
辛かった。
友人として側に居られるというのに、それ以上に何を高望みしているんだと自分を叱責した。
でも、1度自覚した途端、知らない振りなんて出来そうもなかった。
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