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それ以降、彼と少し距離をおいた。
ひどい話だ。
勝手に恋心を抱いたからといって、自分で勝手に距離を置くなんて。
彼も当時それはそれは怒っていた。
もう彼の怒ったところは、見たくないと思うほど。
彼はついに堪忍袋の緒が切れたようで、僕をカラオケボックスに呼び出した。
僕ももう耐えられないと思って、縁を切ろうという思いで、呼び出しに応じた。
◇◇◇
カラオケボックスに着くと、なおが先に席に着いていた。
『…なお。お待たせ。』
「…。」
お互いしばらくの間、無言が続いた。
口を先に開いたのは、僕だった。
『…なお。あのね…。なおの傍にもう居られない。…ほんとにごめん。』
怖かった。
自分から言っておきながら、「そっか」って納得されるのが怖かった。
ギュッと目を瞑る。
『……?』
何も返事が返ってこない。
ーーもう、返事をするのも嫌になったのかな。
そう不安に思って顔を上げると、
「やっと、こっち見た。」
微笑む彼がいた。
僕が驚きで目を見開いていると、
「りつ、最近目も合わせてくれないからさ~。
しかも、そばにいられないとか言うし。」
そう言って、ちらりと僕に目線をよこす。
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