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「…ぁっ。…なお、き、んぁっ。」
ーーあぁ、またか。
これで何回目だろう。僕の“恋人”が他の人と体を重ねている場面に出くわすのは。
「おかえり」の代わりに、誰かも知らない人の喘ぎ声が聞こえるのは。
そもそも、僕は本当に“恋人”なのだろうか。
◇◇◇
僕は、成瀬 律。
僕には付き合って6ヶ月の恋人がいる。
彼の名前は、間宮 尚樹。
そう、同性の恋人だ。
そして僕と同じ大学に通う大学生。
彼は、少し明るめの髪にスッと通った鼻筋。
加えて、モデル並みのスラっとした体型。
大学では、彼の名前を知らない者はいない程の有名人だ。
対して、僕は他より少し頭の出来がいいくらいしか取り柄のない、至って普通の大学生。
人気者と平凡が付き合う。
ましてや、男同士。
漫画や小説だったら、幾度も障害を乗り越えて、仲睦まじく結ばれるのかもしれない。
けれども、そう簡単にいかないのが現実だ。
今の僕たちのように。
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