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尚樹に初めて手料理を振る舞った時、
「律のオムライスが1番好きだな。」
とアーモンド型の瞳を細めて褒めてくれた。
だから今日は、久し振りに尚樹とご飯を食べれるからと思い、尚樹が気に入っていたオムライスを作ろうと思い付いたのだ。
しかし、肝心な卵が冷蔵庫に入っていなかった。
そこで尚樹が帰って来る前にと思い、急いで家に帰って来たら、この有様。
ーー僕は、何のためにここにいるんだろう。
ふと考える。
誰かに強制されたわけでもない。
いつのまにか彼を好きになっていた。
そして彼もこんな僕を「好きだ」と言ってくれた。
彼が「一緒に住もう?」って言ってくれて、ここに住むことになった。
でも。
“きっと彼はもう僕を好きではない”
分かっているのに。
もう、分かりきっているのに。
いつまでも彼の言った「好きだ」の言葉と約束に縋り付いている。
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