バレンタインデー当日

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 そんな愛の証を希望があっさりと受け取って応えることも。  全てが腹立たしくて仕方がない。    この数日の苛立ちすべてを希望に吐き捨てて、ライは希望から離れ、ソファに座り直す。乱暴に動いたので、隣の希望がびくんと震えた。俯いて、ぎゅうっと唇を結び、眉を寄せている。 「っ……!」  希望は急に立ち上がると、そのまま逃げるように部屋を出ていってしまった。  ライは希望が廊下を走る音を途中まで聞いていたが、すぐに興味を失って、意識を逸らす。    楽しそうに喋って、黙っていてもにこにこして、キラキラと輝かせた眼差しを向ける希望がいなくなると、室内には静寂が訪れた。そのことにライは寂しさなどは微塵も感じなかった。希望がいるとライはやたらと神経が逆撫でされるし、思い通りにならない。煩わしいことの方が多い。だから、むしろ清々するとさえ思った。    ライは希望が置いていった荷物を一瞥する。  取りに戻るだろうか。  希望のことだから、自分が買った物はともかく、他人から貰った物をこのままにはしておかないだろう。  そう考えるとまた腹立たしくなる。希望が戻る前に処分すれば、多少怒り狂うかもしれないけれど、諦めるだろうか。  そこまで考えたが、ライはその自分の考えを否定する。     
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