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月曜日、研修棟に集められた期間従業員達にそれぞれ配属される製造課が伝えられた。寺田は車軸課への配属が決まった。自分の手の不器用さを見れば組立に配属するのは無謀とは自分でも思うが、選抜に負けた悔しさも感じる。車軸工場は研修の真向かいに在った。研修棟のロッカーがそのまま車軸課配属以降も自身のロッカーになるので楽だと思った。組立課や塗装課に移動していく連中が二度手間を強いられていて少し面白かった。
寺田を迎えに来たのは、車軸課に何十個も有る組の1つの工長を務めている玄田賢太と云う40過ぎの男だった。贅肉が付いた丸顔の丸坊主に眼鏡を掛けて、背丈は180㎝近く在るが、腹が出ている。ブルーカラー(日製自動車の制服は白が基調だが)労働者の制服が立派に見える機会など寺田には無かったが、無精な玄田が着ているのを見て、着ている者の醜さを掻き消す信用力が備わっているように感じた。
「W91で工長をやっている玄田賢太です。よろしく」
わざわざフルネームを述べて玄田は自己紹介した。ゲンダケンタと云う発音を聴いて寺田は、昔TBSテレビで視た『水曜日のダウンタウン』で徳永英明の『壊れかけのRadio』の歌詞を全て『ハンマーカンマー』で歌い通したハリウッドザコシショウを思い出し、噴き出して笑ってやりたかった。
寺田は玄田に附いて行く。研修棟を出て、研修で教わっていた『指差し確認』で機械的に左右を確認した後、横断歩道を渡って行く。会社敷地内では横断歩道や工場内の交差点では必ず指差呼称をするように決められているため、皆同じ動きをする。寺田は自分も車を作るための機械の部品になったように感じた。
玄田は無口だった。寺田もその方が気楽だった。しかし、制服を着て工場内を移動していると歩きスマホは出来ないから退屈だった。歩きスマホが出来ないことを寺田は、
(これが仕事に就くと云うことか)
と考えて自分で納得した。
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