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成宮は手を洗いながら訊いてくる。
「寺田君は大学出たの?」
「俺は東京国際大学」
「角栄商店街の所か」
「でもバカ大学だよ」
「何処の大学でも先生達は素晴らしいだろう。自分が世話になった大学を悪く言うもんじゃない」
成宮の言葉に、大学へ進めなかった者の怨讐を感じた寺田は成宮に反論するのは悪い気がして黙る。同時に排尿も済んだので、急いで自分のモノをジーンズに仕舞うと、小走りで成宮の隣の洗面台まで進んで手を洗い始めた。成宮は手を洗い終えていて、手洗いを行っている寺田を待ちながら、指先に残った水滴を洗面台に弾いていた。
寺田は成宮に悪い気がして、彼の顔を見ないで自分の両手を見たまま正直に本音を吐露した。
「知らなかったよ。俺よりも勉強出来た成宮君が高卒なんて」
成宮は自嘲気味に鼻息を吹くと、
「手を洗い終わったら、俺の部屋でゆっくり話そう」
寺田は自分を誘って来た成宮の方を見て、
「いいの?」
「ああ。此処だと話せる奴もあまり居ないからな」
寺田は成宮がこの会社で友人が出来ていないことを素早く悟った。寺田は手を洗い終わり、自分の衣服で拭うと、成宮の後ろに附いて行った。
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